5つのパーツからなるカラフルでモニュメンタルな形状は、抽象的でありながら実は具体的なイメージを元に成り立っています。近代オリンピックの象徴である五輪のマークを素材に, そのデザインを解体、再構成し、デザインの中に見え隠れする本質的なメッセージを表出させる試みです。
五輪のマークは、世界五大陸を5色の重なり合う輪で表現され、5つの重なり合う輪は世界の調和、平和への発展を願ったものですが、近代オリンピックの歴史は、ミュンヘン大会におけるテロ事件、冷戦下でのアフガニスタン戦争に伴う東西のボイコット合戦、ベルリン大会でのヒトラーによるプロパガンダなど、不安定な国際情勢の中で行われてきました。
私たちが今日直面する社会問題は、国、民族、あるいは宗教間の摩擦により起こります。五輪のデザインにおいては接点が摩擦を象徴し、この部分が指摘すべき問題点だと考えます。
五輪のマークのデザインの面白さは、理想というイメージが2次元的に表現されているという点と共に、このイメージを3次元に再現すると捻れてしまい、うまくバランスのとれた五輪にはならないという矛盾の発見です。美しく重なり合う五輪のマークのイメージは、つまり虚像なのです。本作品では重なり合う5つの輪の接点のみに焦点を当て、シリンダー形状で立体的に切り抜き、バラバラなパーツを仮止めした形を提示しています。
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